他人の著作物を無断使用してしまいました。わざとじゃなかったのですがやはり責任はありますか?

A:刑事責任はありませんが、民事上の責任は免れません。

著作権侵害をしてしまった場合には「刑事上の責任」と「民事上の責任」が発生します。
(⇒著作権侵害をしてしまったらどうなる?逮捕されるの?参照)

刑事上の責任とは犯罪に対する処罰のことです。
しかし、犯罪は基本的に「故意」による行為、つまりわざとやった場合に処罰されます。
「過失致死罪」など「過失」、つまりわざとじゃない場合でも処罰されるものもありますが、著作権侵害の場合は故意による行為にのみ刑事責任があります。
著作権侵害をするつもりはなかったが、結果的に侵害になってしまった場合には罪には問われないのです。
(ただし本当にわざとでなかったのかは追及される可能性はあります)

民事での責任は免れない

民事上の責任とは、基本的に金銭による損害賠償のことです。
これは故意または過失によって他人に損害を与えた場合に責任が発生します。
わざとじゃなかった場合でも民事上の責任は免れません。

たとえば、インターネット上には無数の画像が存在します。
その中には無料で使用が可能な画像もたくさんあります。
自分のホームページやブログ等に掲載するために、これらの無料画像を使用することはよくあります。

もちろんこれは問題のない行為です。
しかし、本当は有料販売されている画像なのに無料のものと思い込んで使用してしまった場合はどうでしょうか。

これは過失による著作権侵害ということになります。
既に書いた通り、過失であることを証明すれば刑事責任は免れます。
しかし民事上の責任を免れることはできず、お金を払って賠償しなければなりません。

最近の検索エンジンには「画像検索機能」があり、欲しい画像を手軽に検索することができます。
しかし検索エンジンはネット上にある画像を収集しているだけで、画像の著作権に関してはノータッチです。
もちろん検索エンジンの運営会社が勝手に画像の使用許可を与えることはできません。

また、検索結果に出てきた画像は著作権者が正規にアップロードしたものであるという保障はありません。
誰かが無断でアップロードした画像が検索結果に引っかかったという可能性は十分にあるのです。

自分がダウンロードしたサイトには「無料」と書いてあったから大丈夫だと思った、というような場合でも、それだけでは責任を免れることはできません。
無料と書いてあるだけでは何が無料なのかが明確ではなく、著作権者がその画像を個人使用の範囲を超えて使用すること(ブログ等に載せること)を許可していると解釈できる理由にはならないのです。

他人の著作物を利用する場合は、本当に著作権者からの使用許可が得られているのかを確認しなければなりません。
許可があることを確認する作業を怠たると、それは「過失」とされてしまいます。
「まぁ大丈夫だろう」と軽い気持ちで使用すると、ある日突然著作権侵害で訴えられるかもしれません。

実際に支払うことになる額は、正規の使用料金相当の額です。
有料画像は安いものは安いですが、高いものは結構高く、しかも無断使用期間が長いとかなりの額になることもあります。
数十万、数百万という高額な請求が認められたケースもありますので、くれぐれもご注意ください。

全く過失がなければ

賠償の責任は「故意または過失」がある場合に発生するものです。
ということは、故意も過失もなければ賠償の責任もないということです。
これを無過失(善意無過失)といいます。

ただし、賠償の責任はないとしても、権利侵害となっている行為は今後禁止されます。
これを侵害の差止といい、差止請求は無過失の相手であっても可能です。
つまり無断使用となっている状態があるならばその使用を停止させることができます。

無断使用でもOKな場合は除く

著作権法では、権利者に無断で使用してもOKな場合が規定されていますので、それに該当する場合であれば上記のような問題はありません。
(⇒著作権の例外規定参照)