海外サイトを利用する場合、日本の法律は適用されないと聞きました。本当ですか?

A:日本からの接続なら日本の法律の適用範囲です。

著作権法は属地主義と言って、その著作物が利用される場所の著作権法が適用される原則があります。
例えば、アメリカで作られた著作物をアメリカで利用する場合は、アメリカの著作権法が適用され、アメリカの著作権法での保護を受けます。
そのアメリカの著作物を日本に持ち込んで利用する場合は、日本の著作権法が適用され、日本の著作権法での保護を受けます。
ある行為が行われた「場所」の法律が適用されるのが属地主義です。
この時、アメリカの著作権法での保護はなくなりますから、同じ著作物でも利用する国によって保護の内容が異なることになります。

属地主義は著作権法に特有な考え方というわけではありません。
例えば日本国内で外国人が日本の刑法に触れる行為(犯罪行為)をすれば、日本の法律で裁かれます。

さて、実在の「品物」の場合は属地主義の考え方で問題ありませんが、インターネットの場合は世界中とデータをやり取りするため、どこの国の法律を適用すべきかが問題となります。

インターネット黎明期にはインターネットの利用に対して法律が適用された例がほとんどなかったことから、「海外サイト(海外サーバー)を利用すれば日本の法律は適用されない」という説が流布していました。
例えば無修正のポルノ画像の配信は日本では違法ですが、海外では合法な国があります。
日本では違法なデータでもそれを海外サーバーにアップロードしてしまえば、実際にデータを配信しているのは海外のサーバーとなります。
つまり、日本では違法なファイルを合法的に配信が可能となる、という理屈です。

しかしこの説は現在では明確に間違いであると言えます。

「サーバーにデータをアップロードする行為」が日本国内で行われているのならば、日本の法律が適用できると裁判所は判断しています。
実際に、海外サーバーを利用した無修正ポルノの配信で逮捕された人は現在ではたくさんいます。
「海外サーバーなら安全」説は根拠のないただの都市伝説だったわけです。

これは何もわいせつ物頒布の罪に限った話ではありません。
例えばYoutubeへの著作物の違法アップロードでも日本人の逮捕者はすでに何人か出ています。
Youtubeはアメリカのサイトで、サーバーもアメリカにあります。
日本人の逮捕者はアメリカの著作権法ではなく、日本の著作権法に基づいて逮捕されています。
「サーバーの場所の法律が適用される」のであればアメリカの著作権法で裁かれなければならないはずですが、実際にそのようなことは起きていません。
「アメリカの著作権法に引っかかるから日本の裁判所に処罰してもらっている」というような訳の分からないことも起きていません。

結局のところ、日本から接続すれば日本の法律が適用されるという当たり前ともいえる結論となります。

海外から海外のサーバーにアップロードする場合

日本国内からの行為であれば日本の法律が適用可能です。
では、すべて海外で行われている場合はどうでしょうか。

これは基本的には日本の法律の適用範囲外です。
しかし、日本の法律が適用される場合もあります。

「すべて海外で行えば日本の法律の適用範囲外」なのを逆手に取って、海外在住の人間に依頼して、あるいは海外に会社を設立して、日本人向けに無修正ポルノを配信するという事例が実際にありました。
前述の考え方に基づけば、これは日本の法律は適用されないはずです。
しかし最高裁は「日本国内でわいせつデータをダウンロードさせる行為はわいせつ物の頒布に当たる」と判断し、日本の刑法であるわいせつ物頒布の罪を適用しました。
(平成26年11月25日 最高裁)

従来のわいせつ物頒布の罪は、実在の「物」の頒布を取り締まるだけで、データのやり取りは適用範囲外でした。
しかし平成23年に改正され、「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布」する行為もわいせつ物頒布の定義に追加されたため、現在はインターネットを介したわいせつ物のやり取りも適用範囲になっています。

つまり、アップロードだけでなく、ダウンロード行為(閲覧)も日本国内で行われているのならば、日本の法律が適用されるということです。

しかしこれは理屈上は「アメリカ人が、アメリカ国内で合法(日本では違法)なデータを、アメリカ人向けに配信していても、日本の法律で裁かれる可能性がある」ということになります。
そのため、この判決には批判もあります。

とはいえ日本の警察が海外に乗り込んでいくことはできませんし、そもそもそのようなものは問題視されないでしょう。
「日本人が(カムフラージュのために)海外を経由して日本向けに違法データを配信している」あるいは「海外在住者が明らかに日本向けに違法データを配信している」というような場合に適用されるものと考えられます。
(ただし後者は逮捕が容易ではないという問題があります)

著作権法とわいせつ物頒布罪とは別物なのでは?

上記の「海外完結型」の送信(を日本で受信する場合)はわいせつ物の頒布についての話でしたが、著作権法でも同じように適用が可能なのでしょうか?

わいせつ物頒布の罪の条文はこのようになっています。

わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。

次に著作権法では、インターネットを介して著作物をやり取りする行為については以下のようになっています。

第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

第二十三条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。

「権利を専有する」とは、その権利がない者が無断でそれらの行為を行うと著作権を侵害することを意味します。
(著作権の例外に該当する場合を除く)

公衆送信は以下のように定義されています。

第二条 七の二 公衆送信
公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。

括弧内は、例えば学校の校内放送のように同じ建物内で送信が完結する場合を指しています。
インターネットの場合には無関係なので省いて考えます。

「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布」と、「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと」にはそれほど大きな違いがあるとは思えません。
どちらも「ネット等の回線を通じてデータを不特定または多数に送信すること」で、わいせつ物か著作物かの違いがあるだけです。
少なくとも、わいせつ物の場合は海外完結型の送信が摘発できて、著作物の場合は摘発できない、という理由を見出すことはできません。
わいせつ物頒布の罪の場合と同様に「日本国内に向けた送信」であれば日本の著作権法が適用可能と考えられます。
(サイトに日本語で説明が書かれている等、明らかに日本人向けサービスである場合など)

海外の法律にも注意

海外のサイトを利用する場合、当然ながらその国の法律にも注意する必要があります。
日本では合法でも海外では違法という事もありますから、そのようなデータを海外サイトに投稿するとトラブルに発展する可能性があります。

また、複数の国向けにサービスを展開しているサイトは、(民事上の)トラブルが起きた時の準拠法や裁判を行う場所(裁判所)が利用規約で指定されていることがあります。
つまり日本から海外サイトを利用して問題を起こした場合、海外の法律を適用して裁判が行われる(可能性がある)ということです。
見た目は日本人向けのサービスでも裁判は海外で行わねばならない場合もありますから、あまり不用意なことはしないようにしましょう。

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