とある小説の賞に応募したいのですが、著作権は出版社のものになるのでしょうか?
A:応募する賞の規約次第です。きちんと確認しましょう。
				著作権のうち、財産に関する権利は譲渡が可能です。
				(著作権の種類参照)
				そのため、応募要項(応募規約)に「応募作品の著作権は当社に帰属する」と書かれていれば、応募した時点で著作権は応募された側に移ると考えられます。
				(帰属=移転、譲渡のこと)
			
				しかし、すべての応募作品の著作権が移転してしまうということは、落選した場合でも著作権が相手に移ってしまうという事です。
				これはちょっと悪質です。
				普通は何らかの賞を取った場合に著作権の移転が起こるような規約となっているでしょう。
			
				反対に、応募要項に著作権に関する記述が何もない場合は著作権の移転は起こりません。
				賞を受賞しても著作権は自分に残ります。
				もちろん、受賞後に出版社との話し合いによって著作権の譲渡契約や著作権の使用許諾契約を結ぶことは考えられます。
			
				応募要項をきちんと読んだ上で応募しましょう。
				応募しておいて「読んでいない」というのは通用しません。
			
著作権譲渡の場合、勝手に映画やアニメにされてしまう?
				著作権にはその著作物をほかの形に変えて利用する権利というものがあります。
				これを翻案権といいます。
				その他、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利というものもあります。
			
				小説を映像化する場合にはこれらの権利が必要です。
				原作者からこれらの権利を譲渡された人(会社)は、その著作物を自由に映画やアニメにすることができます。
			
				しかし、実はこれら二つの権利を譲渡するには、そのことを契約で明示する必要があります。
				例えば、「著作権はすべて○○に帰属する」という条件で契約を結んだとします。
				「すべて」なので、翻案権や二次的著作物の権利も含まれるように思えます。
				しかし、この条件ではこれら二つの権利は譲渡されません。
				これは著作権法で決められています。
			
(著作権の譲渡)
第六十一条
著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
				「第二十七条又は第二十八条に規定する権利」というのは翻案権と二次的著作物の権利のことです。
				これらの権利を譲渡するならば、そのことを明記しなければ譲渡されないということです。
				「著作権をすべて譲渡」ではこれら二つの権利を譲渡することが「特掲」されていることにはなりません。
			
				応募要項にこれらの権利も譲渡されることが明記されていれば、出版社は応募作品を映画やアニメにすることができます。
				これらの権利を譲渡しないとしても、使用許諾という形で映像化することも可能です。
				(もちろんそのための契約が別途必要)
			
著作権が移転した場合、お金はどうなる?
				著作権というのは作品を勝手にコピーされない、真似されない権利ですが、著作物によって発生する利益を受け取る権利でもあります。
				出版社が著作権を譲渡させるような規約を設けるのは、賞を取った作品を他の出版社に奪われないためです。
				(応募者が作品を他の出版社に持ち込まないようにするため)
				せっかく賞を与えたのに、他の出版社で出版されると意味がないからですね。
			
では、応募者に対する利益はどうなるでしょうか?
				賞によっては賞金を設けているものもあります。
				受賞すれば当然その賞金は頂けますが、それと著作権使用料(いわゆる印税)とは別です。
			
				具体的に応募者にどのような形で金銭が支払われるかは、出版社によるでしょう。
				著作権の買取という形になるか、印税という形で売り上げに応じた額が支払われるかのどちらかになると思います。
				賞金がある場合はそれが著作権使用料、買取料ということになるかもしれません。
			
				これは賞の応募前に知ることはできないことが多いようです。
				出版社によってはロクにお金は支払われないかもしれません。
				こういった賞への応募は利益を得るためというよりはプロデビューするためのものという考え方もあります。
				お金のことを考えるのはプロになってからで、そのプロになるためのひとつの方法ということです。