不要になった本やCD、ゲームなどは中古屋やネットオークションなどで売っても問題ないですか?

A:問題ありません。

中古CDショップや中古本の買取店がたくさんあるのでいまさら疑問に持つことはないかもしれませんが、要らなくなった本やCD、ゲームなどは他人に譲渡(販売含む)しても著作権法上の問題はありません。

著作権には譲渡権という権利があります。
これは著作物を他人に譲渡できる権利で、これも作者(著作権者)が持つ権利です。

(譲渡権)
第二十六条の二
著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。

「譲渡」というとタダで譲るようなイメージがありますが、有料での販売も譲渡に含まれます。
「複製物」の譲渡にも権利が及ぶので、この条文だけを読むと中古屋に売るのは違法な気がします。
しかし譲渡権には続きがあります。

2 前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。

  • 一 前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物
  • 二 (略)
  • 三 (略)
  • 四 前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物
  • 五 (略)

「前項の規定」というのは譲渡権のことです。

簡単に言えば、譲渡権を持つ人(通常は作者、著作権者)から許可を得て譲渡された著作物に関しては、譲渡権が適用されません。
本やCDなどは普通は作者の許可を得て販売されているものなので、一度適法に販売された商品に関しては作者の譲渡権が及びません。
そのため、中古屋に売るなどしても合法というわけです。

ゲーム、DVD(映画)の場合

テレビゲームは著作権法上は「映画の著作物」に該当します。
(一部例外はあり)
映画の著作物の譲渡に関しては譲渡権ではなく頒布権という別の権利で保護されています。

(頒布権)
第二十六条 著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。
2 著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。

「頒布」というのは、有償無償を問わずに著作物を公衆に譲渡、貸与する権利です。
この頒布権には、譲渡権の時のような「許可を得て譲渡されたものは除く」という規定がありません。
そのため、ゲームの中古販売は違法であるという結論を導くことができます。

実際に中古ゲームショップがゲームメーカーから訴えられて裁判になったことがあります。
下された最高裁判決は「ゲームの中古販売は合法」というものです。
テレビゲームソフトウェア流通協会 #撲滅キャンペーンと中古ゲームソフト裁判 - Wikipedia

内容を簡潔に説明すると、テレビゲームは通常の映画の著作物とは異なり、家庭内での視聴を前提としているもので、こういったものは一度適法に譲渡(販売)されれば頒布権は消尽する、というものです。
元々映画の著作物に頒布権が認められていたのは、映画は他の著作物に比べて制作に多額の資金が必要だったことや、映画の配給制度(複製テープを映画館に譲渡、貸与する制度)などがあり、著作権者の意図しない上映を防いで資金回収させる必要があったためです。
そのような事情のない、家庭内での視聴を目的とするゲームには頒布権を認めることはできないという判断です。
同様に、家庭内で視聴する目的のDVDも中古販売が認められることになります。

ただし、公衆に視聴させる目的での中古販売は違法となる可能性があります。

また、これらの譲渡権、頒布権の消尽は適法に譲渡された著作物(の複製物)に対する規定です。
適法に譲渡されていない物に関しては権利が消尽していません。
例えば違法に複製したCDなどは「適法な譲渡」がないため、他人に譲渡すると譲渡権の侵害になります。