著作権侵害をしてしまったらどうなる?逮捕されるの?

A:逮捕の可能性はゼロではありませんが…

著作権法には、著作権を侵害した時の罰則が規定されています。
罰則があるということは、著作権侵害は犯罪行為ということです。
犯罪行為なので、逮捕される可能性はあります。

その罰則は「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれの併科」で、他の犯罪と比べても結構重いものとなっています。
(侵害した内容によって罰則は変わりますが、基本的な侵害行為は上記罰則です)
「このくらい平気だろ」と安易に著作権を侵害をすると、ある日突然警察が家にやってくるかもしれません。

しかし著作権侵害は親告罪という、少し特殊な犯罪となっています。
簡単に言えば、親告罪とは被害者が被害を警察に訴えて初めて罪に問える犯罪です。
つまり、警察が被害者の意向を無視して勝手な判断で逮捕したりはしないのです。

もちろん被害者が訴えれば警察が動くわけですが、現実にはよほど悪質な侵害行為でない限りは被害者は訴えません。
被害がなければ別に放置しても問題ないので放置する人が多いのです。

著作権侵害の被害者は企業であることが多く、企業がちょっとした被害で一般人をバンバン訴えるようなことをするとイメージ的にマイナスになることも考えられます。
同人活動などは本来は多くの場合で著作権侵害なわけですが、多くの企業が黙認している状態です。
あえて侵害を黙認することで企業イメージを傷つけず、むしろファン活動を活性化させることで売り上げにつながるというプラスの効果も考えられます。

また、被害がほとんどないような侵害行為の場合は警察に訴えても「まず民事でやってください」という立場だそうです。
というのも、刑罰は最終手段であって安易に人に刑罰を科すべきではないという考え方があるためです。

以上のような理由から、著作権侵害をしても逮捕される可能性はそれほど高くないと言えます。
しかし絶対大丈夫という保障はなく、悪質性が高ければ逮捕の可能性は十分にありますのでご注意ください。

2018年12月30日より、一部の違法アップロード行為については非親告罪化されました。
これは被害者の訴えなしに罪に問える犯罪、という意味です。
詳しくはTPPと著作権法改正で解説しています。

刑事責任は故意による侵害に限る

著作権侵害で刑事上の責任を負うのは、故意、つまりわざと著作権を侵害した場合に限られます。
過失、つまりわざとじゃなかった場合には刑事責任は免れます。
著作権法では過失による侵害の場合の罰則が規定されていないためです。

ただし民事上の責任は過失でも免れません。

民事上の責任

著作権侵害をすれば刑事罰だけではなく、民事上の責任も負うことになります。
民事上の責任とは、要するに金銭による損害賠償です。
賠償以外にも、侵害行為の差止処分(侵害状態の解消、今後の侵害の防止)をされる場合もあります。

著作権侵害の賠償額は他の犯罪や一般的なトラブルなどの賠償とは違い、特殊な計算方法が用意されています。

その1
・商品額×侵害行為によって譲渡した数

例えば1000円で販売されているCDを、無断で100枚コピーして配った場合には
・1000×100=10万円
が賠償額となります。
ただし、正規の販売者の販売能力を超えるなどの事情があればその分は減額されます。
例えば普通に販売しても10万枚しか売れないCDは、侵害者が100万枚コピーして配ったとしても100万枚分は賠償しなくても良いということです。

その2
・侵害者が儲けた金額

これは単純にそのままです。
例えば1000円で販売されているCDを、無断で100枚コピーして1枚当たり500円で販売した場合には
・500×100=5万円
が賠償額となります。
正規の販売額である1000円はこの場合は関係ありません。

その3
・正規のライセンス料金相当の額

音楽の有料配信事業(ダウンロード販売)などは売り上げの○%をライセンス料として支払う、という契約で有料配信されていることが多いです。
これを侵害額として推定します。
例えば著作権侵害によって今までに100万円売り上げていて、本来の正規ライセンス料が売り上げの10%である場合には
・100万円×0.1=10万円
が賠償額となります。

その4
・著作物が著作権管理事業者に管理委託されている場合、その使用料相当
(2018年12月30日以降)

著作権管理事業者とは、有名なものでいえばJASRACです。
こういった団体は著作権者からの依頼を受けて、著作物を利用したい人に対して有料で著作物の利用を許可することを事業としています。
著作権侵害された著作物がこういった団体に管理委託されている場合、その団体が規定する使用料のうち最も高い額を著作権侵害に対する賠償額とすることができます。

その5
・上記以外の方法

著作権侵害による損害の額というのはなかなか立証することが難しいため、上記のような4つの損害額の推定方法が特別に設けられています。
しかし上記のどれかで損害額を推定しなければならない、とは決められていないため、別の方法で損害額が立証できるのならばそれを用いることもできます。

また、損害額の立証が困難である場合は裁判所が損害額を決める場合があります。
例えば、そもそも有料販売していない著作物などは無断使用によって一体いくらの損害を受けたのかの立証が困難です。
このような場合には、裁判所は独自の判断で損害額を認定できるのです。

その2の方法とその3の方法は矛盾するように思えるかもしれません。
被害者はできるだけたくさん賠償金を取りたいので、その2の方法を採用した方が都合が良いですね。
しかし裁判所がそれで納得してくれるとは限りません。
加害者側はできるだけ賠償額を少なくしたいので、被害者が受けた被害はもっと小さいものであると立証してきます。
もし立証されると、裁判所はその2の方法は採用してくれません。
(賠償とは被害者が受けた損害の「埋め合わせ」なので損害以上の額は払う必要はない)
そのような場合にはその3の方法を採用することがあります。

無過失ならば賠償責任もない

賠償責任が発生するのは「故意または過失」によって相手に損害を与えた場合です。
故意も過失もない場合(無過失)には賠償の責任は発生しません。
例えば、詐欺師に騙されて著作物の使用許可を得たと信じてしまった場合などは責任は発生しないと考えられます。

ただし、侵害行為の差止請求は無過失の相手であっても可能です。