TPP締結による著作権法の改正
TPPという言葉をニュースなどで見かけたことがある人は多いでしょう。
かなりざっくりと説明すると、加盟国同士で共通のルールを作りましょうというものです。
この「ルール作り」は著作権法にも影響を与えます。
TPPによる著作権法改正は2018年の12月30日より施行されています。
(施行=法律が有効になること)
ここでは改正のうち特に重要な「保護期間の延長」と「一部の著作権侵害の非親告罪化」について解説します。
保護期間の延長
著作物の保護期間は基本的に作者の死亡から50年保護される、というのが今までの著作権法でした。
これが2018年12月30日から70年の保護に延長されています。
著作隣接権の保護期間も同様に50年から70年に延長されます。
(放送、有線放送の著作隣接権は50年のまま)
ただこれだけの単純な改正ですが、保護期間が変わると具体的にいつまで保護があるのかが少しややこしくなるので説明しておきます。
年数のカウントは作者の死亡日からではなく、作者の死亡の翌年の1月1日からカウントします。
(この数え方は改正前から同じです)
例えば、2000年の5月1日に作者が死亡した場合は、2001年の1月1日からカウントを開始します。
保護期間が死亡から50年までならば2050年の年末までが保護期間となります。
(なので、実際には「50年と少し」が保護期間となります。イメージがわかない人は「保護期間が1年」の場合で考えてみましょう)
これがTPPにより50年から70年に延長されるので、法改正後は2000年に死亡した作者の著作物は2070年の年末までが保護期間となります。
では、作者が1950年に死亡した場合は2020年までの保護となるのでしょうか?
単純に計算すればそうなるのですが、1950年死亡の作者の著作権は2000年の年末で切れています。
このように一度保護期間が終了した著作物は、法改正の影響を受けることなく切れたままになります。
改正著作権法の施行日である2018年の12月30日の時点で著作権が切れていない著作物が保護期間延長の対象です。
具体的には1967年の年末までに死亡した作者の著作権は2017年の年末までに保護期間が切れていますので、保護期間は延長されずに切れたままとなります。
1968年1月1日に死亡した作者の著作権は本来ならば2018年の年末までが保護期間です。
改正著作権法の施行日である2018年の12月30日時点ではまだ保護期間中なので、50年が70年に延長されます。
つまり作者が1968年1月1日以降に死亡した場合は保護期間延長の対象です。
一部の著作権侵害の非親告罪化
故意による著作権侵害には刑事罰が設けられています。
つまり犯罪行為ということですから最悪は逮捕もあり得ます。
ただし、著作権侵害は親告罪といって、被害者(著作権者)が告訴しない限りは刑事裁判ができない犯罪です。
刑事事件化するには通常の犯罪よりもひとつハードルがあるということです。
今まではこうでしたが、TPPによる著作権法改正により一部の著作権侵害行為が非親告罪化されました。
あくまでも一部の侵害行為であって全部ではありません。
具体的に非親告罪化される行為とは、
- 有償著作物を複製し、原作のまま公衆に譲渡すること、または原作のまま公衆送信すること
- 利益を得る目的、または権利者の利益を不当に害する目的であること
- 権利者の利益が不当に害されること
のすべてを満たす場合です。
有償著作物とは、著作物の提供について対価を支払うものです。
簡単に言えば有料で販売されているもの、お金を払わないと見られないものです。
公衆送信とは放送やインターネット通信などで不特定多数に著作物を送信することを言います。
ネットならば「アップロード」「ネット配信」する行為です。
ごく簡単に言えば、音楽CDや映画、漫画などをコピーしてそのまま配布するような行為が非親告罪化されます。
ネット上にある違法配信ファイルなどは、今後権利者の訴えなしに警察が逮捕できるということです。
ちなみに、TPPによる法改正前からいくつかの行為はすでに非親告罪となっているものもあります。
(著者名を偽って著作物を配布する行為など)
二次創作(二次的著作物)は対象外
非親告罪化されるのは「原作のまま」配布等することが対象ですから、二次創作物を作って配布する場合は対象外です。
趣味で描いたイラストや同人誌の配布などは今までと変わらず親告罪のままです。
もちろん、有料で販売されている二次的著作物をコピーして配布する行為は非親告罪です。
その他の改正
TPPによる著作権法の改正は他にもありますが、日常生活ではあまり関係のないものなので説明は省きます。
詳しく知りたい場合は文化庁のサイトをご覧ください。
環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備 | 文化庁