自分で購入した本の表紙やCDジャケットをネットに載せたいのですが、ダメですか?

A:一部の例外に該当すれば合法ですが、そうでなければ違法です。

書籍やCDは当然ながら著作物であり、著作権法で保護されますので、無断でネット上にアップロードすることはできないのが原則です。
しかし著作権法には例外規定があり、この場合には著作権を侵害しません。
(許可なく著作物が使えるケースを参照)

ここでは、本の表紙やCDのジャケットなどを無許可でネット上にアップロードできるかを考えてみます。

このページではこれ以降「本」と「CD」をまとめて「書籍等」と、「本の表紙」と「CDジャケット」をまとめて「表紙等」と記述します。

表紙、ジャケットは著作物か

本は「表紙」と「中身」とでは別の(独立した)著作物と考えらえます。
さらに細かいことを言えば、中身もそれぞれで独立した著作物である可能性もあります。
例えば雑誌などは記事毎にライターが異なりますし、写真などもカメラマンが異なります。
これらはそれぞれ単独で独立した著作物になると考えられます。
音楽CDの場合も音楽とジャケットは独立した著作物です。

当然ながら、著作物でないものをネットにアップロードしても著作権侵害にはなりません。
もし表紙等が著作物でないならば、ネットにアップロードできることになります。

例えば、書籍等のタイトル文字だけのごくシンプルな表紙であれば著作物ではない場合もあるかと思います。

本の表紙の著作物性を判断した裁判例に「入門漢方医学 書籍表紙デザイン翻案事件」があります。
(⇒判決文)

上記の裁判では以下の書籍の表紙が著作物として認められています。
入門漢方医学 / 日本東洋医学会学術教育委員会 (編集) | 日本臨床漢方医会
nyuumonkannpouigaku
(出版:南江堂)

表紙に写真は使用しておらず、デザインも棒線や四角形などをちりばめたものです。
判決では、棒線や図形を漫然と並べたものではなく、作者の思想感情が創作的に表現されたものである、として単独で純粋美術に該当すると認められています。

どの程度であれば著作物となるか、判断は非常に困難ではないでしょうか。
誰が見ても著作物ではないようなものは別として、やはり表紙等は著作物である前提で扱うべきでしょう。

例外規定:引用

著作権の例外規定として、引用に該当する場合は無許可でもアップロードが可能です。
(詳しくは⇒引用について)

見栄え目的

例えばウェブサイト作成やブログの記事作成などで、単に見栄えをよくする目的での掲載は引用とは認められません。
これを認めるということは実質的に無断転載をほとんど無制限に認めることになります。
例えば有料の写真素材なども引用ということにすれば使い放題となりかねません。

作品の紹介

引用の目的は「報道、批評、研究」が代表的なものですが、これらには限定されていません。
紹介のために作品の一部を引用することも一般的に許されていると考えられます。

目的が紹介ですから、紹介のために表紙等を引用することも合理的な範囲と考えられます。

ただし、単に画像を掲載するだけでは引用にはなりません。
紹介のための文章をしっかりと書く必要があります。
引用は、紹介文などの自らの著作物が「主」であり、引用される著作物が「従」でなければなりません。
表紙等の画像に短文を添える程度では画像が「主」となってしまい、引用は成立しなくなります。

中身の批評等

すでに書いた通り、本の表紙と中身は別の著作物です。
「本の中身の批評(や研究など)」のために本の表紙を引用する必要はありませんから、引用は認められない可能性があります。
音楽の批評のためにCDジャケットを引用する場合も同様に、認められない可能性があります。

他方、読み手のために表紙等を掲載する程度は紹介のための引用として認めても良い、とする意見もあります。

これを判断した裁判例は今のところおそらくありません。
書籍等の批評は著作権者にとってそれほど不利益なものではなく、たとえ表紙等が無断使用されていたとしても裁判にまでは至らないのでしょう。

表紙デザインの批評等

表紙等のデザインについての批評がしたい場合は、その画像がなければ批評が困難ですから、引用は成立すると考えられます。
もちろん、引用の要件はきっちり満たす必要があります。

例外規定:譲渡の申し出

書籍等を他人に譲渡(販売)する場合、必要に応じて品物の画像を複製して使用することができます。
詳しくは美術品を譲渡する場合に必要な複製を参照してください。