パブリックドメイン

著作権の保護期間が終了した著作物

著作権は基本的に作者の死後70年間は著作権法によって保護されます。
(⇒著作権の保護期間)
保護期間が終了した著作物は法的な保護が消滅します。
著作権がなくなるので、著作物は誰もが自由にコピーしたり演奏したりできるようになります。
このような権利の消滅した著作物をパブリックドメインといいます。
(パブリックドメインという言葉自体は著作権以外にも知的財産権全般で使われます)

インターネット上にはパブリックドメインとなった作品を集めたサイトなども存在し、これらの著作物は自由にコピーや使用ができます。
(例:pixabay:パブリックドメインの写真を扱うサイト
青空文庫:著作権切れの小説を公開しているサイト)

保護期間の終了以外にもパブリックドメインとなる理由はいくつかあります。

権利放棄

著作権は作者自身が放棄することができます。
この場合もはや誰も著作権を保持していないので、パブリックドメインとなり自由な使用ができるようになります。

作者が積極的に著作権を主張していないだけ、というのは権利放棄ではないので注意が必要です。
作者が「この作品の著作権を放棄する」と明言している場合に著作権放棄となります。

相続人の不在

著作権は作者の死後70年保護されますが、作者死亡後にその権利を誰にも相続しなかった場合、著作権は消滅します。
もしくは団体の著作物の場合に団体(会社等)が倒産した場合、著作権処理を行わず誰にも相続させなかった場合も同様に消滅します。

きちんと権利処理している場合も多いので、ある会社が倒産したからといってその会社が持っていた著作権は消滅するとは限りません。
むしろ著作権は財産なので、誰かが引き継いでいる事のほうが多いでしょう。

パブリックドメインの著作物であっても、その作品を利用して作られた作品には新たに著作権が発生します。
たとえばバッハの作品をアレンジして新たな曲が作られれば、その曲には編曲者(アレンジした人)に新たに著作権が発生します。

また、パブリックドメインの作品を演奏したり録音したりしたものには著作隣接権が発生します。
バッハの演奏をCDに収録したものには演奏者やレコード制作者の権利が発生していますので勝手にネットに公開したりはできません。

二次的著作物の保護期間は作者の死後70年、著作隣接権の保護期間は作品の公表後70年です。

著作者人格権までは消滅しない

パブリックドメインとなった作品は著作権・著作隣接権は消滅していますが著作者人格権までは消滅しません。
著作者人格権とは作者の人格を保護するもので、たとえば作者をバカにするための悪質な改変などを行うことは禁止されています。

厳密に言えば著作者人格権は作者死亡によって消滅するものと考えられていますが、著作権法では作者の死後も著作者人格権を侵害するような行為は禁止されています。
場合によっては遺族から訴えられることもあります。

著作者人格権は「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」および「名誉声望保持権」です。
例えば著作権切れの作品でも作者名を偽る、悪意のある改変を行う、などすることはできません。
改変をしなくても、例えばアダルト関連の広告に使用するなどは名誉声望保持権を侵害する可能性があります。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

著作物の再利用を促進するライセンス

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは著作者が自身の著作物を最大限に利用してもらうための再利用の許可(ライセンス)です。
単純に「クリエイティブコモンズ」や「CCライセンス」とも言います。

ライセンスにはいくつかの種類があります。

表示(by)

作品を利用する場合に著作者の氏名の表示要求

非営利(nc)

非営利目的での使用に限定する

改変禁止(nd)

いっさいの改変の禁止

継承(sa)

クリエイティブコモンズ・ライセンスの作品を利用して作られた新たな作品について、元作品のライセンスをそのまま継承することで配布を認める

これらを組み合わせて自身の作品のライセンスを決めることができます。
実際には

  • 表示
  • 表示 + 改変禁止
  • 表示 + 継承
  • 表示 + 非営利
  • 表示 + 非営利 + 改変禁止
  • 表示 + 非営利 + 継承

の6つのパターンが使用されているようです。

たとえば「表示 + 非営利」のライセンスの作品であれば、売り物でない自分の著作物に、そのライセンスの作品を改変した上で取り入れてもかまわないということになります。
(ただし元作品の著作権表示は必要)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスについて詳しくはクリエイティブ・コモンズ・ジャパンのサイトを確認してください。

「著作権フリー」ではない

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの作品は比較的自由度の高い利用ができますが、パブリックドメインのような「著作権が存在しない」ものではないことに注意が必要です。
ライセンスで許可されていない方法で利用すれば著作権侵害となります。

GPL

似たようなものにGPLがあります。
これは主にソフトウェアに使用されるライセンスで、コピーレフトであることが特徴です。
コピーレフトとはGPLライセンスで公開された作品は、それを利用して作られた二次的著作物に対しても同じライセンスの元で複製や配布などを許可するというものです。
フリーソフトやプログラムのコードなどで広く普及していて、優れたコードを再利用することで開発の手間の削減や品質の向上が可能となります。

その他の「著作権フリー」

「フリー」という言葉に注意

その他、ネット上には「フリーソフト」「フリー素材」「フリーBGM」などの名前でいろいろな作品が公開されています。
これらは実は「著作権放棄」という意味ではく「利用規約などで許可した範囲でならフリー(自由もしくは無料)」という意味合いのものがほとんどです。

つまり著作権自体は作者が保持したままなので、利用規約の範囲外のことに使用すれば著作権侵害となってしまいます。
これは上記クリエイティブコモンズやGPLでも同じです。
しかし「著作権フリー」はクリエイティブコモンズなどとは違い、どのような使用を許可するかは作者が独自に決めていることがほとんどなので多いので注意が必要です。
同じような利用方法でも、作者や作品によってOKだったりNGだったりするのできちんと確認してから利用しましょう。

ロイヤリティフリー

似たものにロイヤリティフリ-があります。
これはあらかじめ決められた範囲での使用であれば著作権利用料(ロイヤリティ)は必要ないというものです。
この場合の「フリー」は「自由」ではなく「無料」という意味です。

注意点としては、ロイヤリティフリーの作品は無料利用できるものばかりではありません。
有料の作品も多く存在し、あらかじめ決められた範囲での利用ならば追加で著作権使用料を払う必要はない(追加の使用料が無料)、という意味です。

写真素材などに多く用いられている方法です。

  • 著作権が消滅したものはパブリックドメインとなり、誰でも自由に使用できるようになる
  • パブリックドメインを元に作られた二次的著作物には著作権、著作隣接権が新たに発生する
  • クリエイティブコモンズやその他のライセンスなどで許可されている範囲であれば著作物を自由に使用できる