違法ダウンロードあれこれ

「違法であると知りながら」とは

前ページからの続きとなります。

違法ダウンロードが成立するには、ダウンロード時に「違法なファイルであると知っていること」が必要と書きました。
逆に言えば違法アップロードされている音楽をダウンロードしても、それが違法ファイルとは知らなければ罪には問われないということです。

これを根拠としてネット上では「もし警察が来ても違法とは知らなかったと言い張れば大丈夫」という意見もあります。

しかしそこまで甘いものではないと思ったほうがいいでしょう。
まず普通の人間は警察に家宅捜索されるだけで世間体など社会的ダメージが非常に大きいです。
さらに身柄を拘束されれば数日間は身動きが取れなくなります。
数日間拘束されても平気という人はあまりいないでしょう。
(逃亡の恐れがなければ逮捕はされないこともある)

そもそも犯罪というのは違法ダウンロードに限らず「罪を犯す意思」がなければ罪には問えません。
(刑法38条。ただし過失罪はその意思がなくても成立します)
口先だけで「犯意はなかった」「知らなかった」と言うだけで罪を逃れられるのならほとんどの犯罪が成立しないことになります。
しかし実際にはそんなことはなく、裁判により犯意を証明できれば有罪となります。

ではなぜわざわざ「違法であると知りながら」などという文言が付けられたのでしょうか。
(正しくは「その事実を知りながら」ですが)

おそらくこれはネット上などで起こっている、ダウンロード違法化に対する批判を少しでも抑えるためではないかと思われます。
刑法38条により犯意がなければ罪には問われないのですが、一般の人はそこまで法律に詳しいわけではないので、「違法ファイルと知らずにクリックしただけで犯罪者になる」と批判されました。
そのため、違法である認識がなかった場合には罪に問われないことをより明確にするためにこの一文が付けられたと考えられます。

しかし今度は「どうやって違法なものと知っていることを証明するんだ」「あいまいだ」と批判されることになりました。
とはいえ法律があいまいなのは今に始まったことではなく、だからこそ裁判があるのです。

ごく一般的な判断をすれば、商業音楽を買わずに全部違法ダウンロードで済ませているなど常習的に違法ダウンロードを繰り返しているような人は犯意ありと判断される可能性が高いでしょう。
逆に合法的なものと勘違いしても仕方ないような状況(騙しリンクとか)で1,2個程度ダウンロードしてしまった場合などは犯意なしと判断される可能性が高いでしょう。

警察は家にやってくる時点ですでに「逮捕に十分な証拠」を掴んでいます。
(そうでなければそもそも令状が取れない)
家宅捜索は確実に有罪に持っていくための証拠固めや、単純に形式的なものということもあります。

一番無難なのは怪しいサイトやファイルには近づかないことです。

Youtubeの違法動画を見たら違法ダウンロード?

ダウンロードとはPCにデータをコピーすることです。
ネット上で動画を見るということは、動画データがPC内にダウンロードされていることになります。
たとえそれが一時的な物だとしても、複製行為が行われていることには変わりありません。

ではYoutubeなどの動画サイトにある違法アップロード動画を見てしまったら、それだけで違法ダウンロードになるのでしょうか?

このような場合は違法ダウンロードにはなりません。
ネット上で見られる「ストリーミング動画」「擬似ストリーミング動画」は例外的に違法ダウンロードにはなりません。

これは著作権法47条の8「電子計算機における著作物の利用に伴う複製」という著作権の例外規定に該当するからです。
文化庁がこの見解を出しています。
文化庁|平成21年通常国会 著作権法改正等について
(ページ下のほうの「問10」を参照)

著作権法の改正により、2019年1月1日より著作権法47条の8は著作権法47条の4に統合されています。

ただし文化庁見解と司法判断とは異なる可能性があり、司法(要するに裁判)では「Youtubeで見るだけでも違法」となる可能性はまったくないわけではありません。
9割方大丈夫だとしても違法な動画は視聴しないようにするのが望ましいでしょう。

当然ながら違法な動画をダウンロードしてローカルで見られるようにする行為はダメです。
(ローカル:ファイルとして保存するなど、ネットに繋いでいない状態でも見られるようにすること)

違法ダウンロードなんて結局バレないんじゃないの?

「警察だって個人がどんなファイルをダウンロードしたかなんていちいちチェックしないだろうし、結局バレることはないんじゃない?」という意見もあります。

確かに逐一チェックはしていないでしょうけれど、それでもバレる時はバレるでしょう。

すでに説明しましたが、違法アップロード、違法ダウンロードなどの著作権侵害は親告罪といって、被害者が訴えて初めて罪に問えます。
ということは被害届がない限りは警察は捜査しません。
逮捕できないものを捜査する意味がないですからね。
しかし逆に言えば被害届が出されたら捜査されます。

ネット上でサイトを見たりファイルをダウンロードしたりすると通信先(サイトやサーバー)にIPアドレス(ネット上の自分の住所のようなもの)を通知します。
インターネットの仕組み上、これを通知しないと技術的にデータを受信することができないので、必ず通知されます。

またプロバイダー(インターネット回線契約時の業者のこと)にも通信記録は残されます。
これらの通信記録を後から調べれば誰がいつどんなファイルをやり取りしたかがわかります。

通信記録は非公開ですが、警察の捜査や裁判所命令など正当な理由があれば公開されます。
こうやって違法なファイルをやり取りした人物を特定します。


「誰が違法ダウンロードしたかがわからないのに被害届なんて出せるわけがない」
「『違法ダウンロードした人間がいるはずだ』という予想だけでは被害届提出はムリ」

一見もっともですが、そもそも被害届というのは相手が特定されていなくても提出できます。
空き巣に入られたけど犯人がわからないから被害届を出せない、などということはありません。

違法アップロードはされた側には犯人は分かりませんが、犯人の特定作業は警察がしてくれます。
違法アップロードで毎年逮捕者が出ている以上、どこの誰だかわからない人間に対してでも被害届は出せますし、逮捕は可能です。

違法アップロードの捜査時に通信記録を調べますから、そのときに違法ダウンロード被害の実態がわかります。
そのついでにダウンロード者も…という可能性はあるでしょう。

  • 本当に違法ファイルと知らずにダウンロードしてしまった場合はセーフ
  • しかし知っていたのに「知らなかった」と言い訳しても通らない可能性が高い
  • Youtubeなどのネット上で見る動画サイトの視聴はどんな動画でも一応セーフ
  • しかし違法な動画をダウンロード保存していつでも見られるようにするのはアウト
  • 違法ダウンロードは通信記録を調べればほぼ確実にバレる

違法ダウンロードについては特設サイトで詳しく解説していますので、そちらも参考にして下さい。
そのダウンロード、違法かも?