複製権

複製権とは、その名のとおり著作物を複製するための権利です。
複製とは要するにコピーです。
「著作権」は英語では「Copyright」といい、文字通り「コピー権」を表します。
著作権法のもっとも基本的な権利です。

たとえばCDを作る場合、原盤と呼ばれる複製元をまず最初に作ります。
この原盤を元に大量の複製を作ってそれを店頭に並べます。
漫画なんかも同じですね。

著作権法でいう「複製」は一般的な用語としての複製とはやや異なります。
詳しくは以下のページで解説しています。
「複製」とは具体的にどういう行為か

複製権は作者自身が持っていますが、大抵は作者と契約している出版社が行使します。
作者の許可を得ない第三者が勝手にコピーして配ることはできません。
(違法に配布されているものを海賊盤といいます。)

では作者や作者から許可を得た人以外、たとえばCDや漫画の購入者はそれを勝手にコピーすることはできないのでしょうか?

答えはある条件内であればできます。
その代表的な例が私的利用のための複製(私的複製)です。

著作権を持たない人が権利行使(たとえば複製など)をすると著作権侵害となりますが、著作権法ではある一定の条件を満たせば侵害にはならないと定められています。
このような例外を著作権の制限、または単純に著作権の例外といいます。
私的複製も著作権の制限のひとつです。

私的複製について

私的複製とは「自分や自分の家族が使うようなごく狭い範囲であれば許可なく勝手にコピーして良い」という著作権の特別な例外です。
つまり

  • CDを買ってきて、そのCDをCD-Rに焼く
  • いろんなCDから好きな曲を集めてオリジナルCD-Rを作る
  • レンタルCDをコピーする
  • iPodやウォークマンなどにコピーして外で音楽を聴く
  • 家族に音楽を入れたCD-Rをあげる

などはすべて私的複製の範囲となりますので合法です。

ただし私的複製にも3つの例外があります。

  • 公衆に設置されている自動複製機を使っての複製
  • 技術的保護手段(コピーガード)を回避しての複製
  • インターネット上の違法な音楽・映像ファイルのダウンロード
    (いわゆる違法ダウンロード)

この3つは、たとえ私的な目的での複製でも違法行為となります。

公衆に設置されている自動複製機を使っての複製

公衆に設置されている自動複製機とは、誰もが自由に使えるように設置されていて、ボタンを押すだけでコピーができる装置のことです。
この装置を設置すること自体が罪になるのでまず見かけることはありません。
コンビニのコピー機もこれに該当するのですが、文章や図形を紙に印刷するための装置は例外的に該当しないということになっています。

技術的保護手段を回避しての複製

技術的保護手段とは、DVDなどに使用されているいわゆるコピーガードです。
コピーできないようにしているものを無理やりコピーしてしまうと違法になります。

2012年10月に著作権法の改正が行われ、ほとんどのDVDのコピーは違法行為となりました。
これが「リッピング違法化」と騒がれたため、勘違いした人が「CDのリッピングも違法になる」と大騒ぎしました。
(リッピングとはパソコンなどにCD・DVDのデータをコピーすることです)
しかしあくまでも「コピーガードを回避しての複製」が違法であって、CDは通常コピーガードがないのでいままでどおりコピーして問題ありません。

CCCD(コピーコントロールCD)という、コピーガードのようなものが使われているCDもありますが、コピーガードとは名ばかりで普通にパソコンで複製できてしまうことが多いです。
特別な方法(CCCD専用の複製装置やソフトなど)を使ってコピーしない限りは大丈夫です。

違法ダウンロード

違法ダウンロードは2012年10月の法改正で話題になりました。
インターネット上には著作者に無断で勝手に公開(違法アップロード)されているファイルがたくさんあります。
この違法なファイルのうち、映像と音声の違法ファイルを、違法なものと知りながらダウンロードする行為が違法ダウンロードになります。

2021年1月施行の改正著作権法により、違法ダウンロードの条件から「映像と音声」はなくなり、全ての違法アップロードされている著作物が対象となりました。

違法ダウンロードについては別のページで詳しく解説します。
(⇒違法ダウンロードについて)

私的複製の範囲

私的複製で認められるのは「自分」または「家族」、もしくは「それに準ずる範囲」とされます。
自分と家族はそのままの意味ですが「それに準ずる範囲」とはなんともあいまいです。
具体的には

人数的には家庭内に準ずることから通常は 4~5人程度であり、かつ、 その間の関係は家庭内に準ずる親密かつ閉鎖的な関係を有することが必要とされる (著作権審議会第5小委員会報告書(昭和56年)文化庁)

家族も同然の親密な付き合いのある人4~5人程度ならOKということです。

この範囲を超えてコピーする場合は私的複製にはなりません。
たとえば、クラスメイトに「あなたが持ってるそのCDをコピーして私にちょうだい」と頼まれてコピーした場合は私的複製にはなりませんから違法になります。
ただしクラスメイトにCDを貸して、そのCDをクラスメイト自身がコピーするのは「クラスメイトが自分用にCDを私的複製する」ことになります。
CDを貸すこと自体は合法ですから、合法的な複製ができるということになります。
(あまり好ましい行為ではないですが)

著作物の改変もOK

私的複製の範囲ならば、著作物を改変して利用することも許されています。
例えば英文を日本語に翻訳したり、音楽CDから音をサンプリングしてオリジナル曲を作ったりすることも合法的に行えます。
もちろん、改変して作ったものを私的な範囲を超えて使用すると違法になり得ます。

複製物の目的外使用

当初は私的複製(などの合法的な方法で複製)したものを、その複製目的以外で使用することを複製物の目的外使用といいます。
例えば元々自分で聞く目的でコピーしたCD-Rを、クラスメイトから頼まれて貸すような場合です。
これは違法となります。

正確に言えば、即違法と判断されるのではなく、再度複製を行ったものとみなされます。
(目的外使用自体は複製行為ではないが、複製と同じ行為とみなされる)
つまり、複製物を使用する目的が、複製が許される他の例外規定に該当する場合は合法です。

例えば、学校の授業で使用するためならば著作物を合法的に複製することができます。
(詳しくは⇒学校で著作物を使う場合で説明しています)
元々私的な目的で複製したものを、学校の授業で使用するために使うのは合法ということです。

  • 著作者に無断でコピーはできないが、私的な目的であれば無断でコピーしていい
  • 私的目的とは自分や家族が使う目的。ただの友達は基本的にダメ
  • コピーガードを無効にしてのコピーは私的目的でも違法
  • 違法ダウンロードも同じく私的目的でも違法