著作権の発生と消滅

著作権はいつ発生する?

なぜ著作権は必要?でも説明しましたが、著作権というのは基本的にその著作物が作られた時点で自然に発生します。
著作権は特許などとは違って国の機関に申請しなくても自然発生します。
プロの作品でも素人の作品でも関係なく発生します。

実際にいつ発生したか(いつ作品が作られたか)を明確にすることは困難ですが、このことは著作物を利用する側には特に問題になることはありません。
いつ作品が作られようと保護期間は変わらないからです。

著作物の盗作問題では「どちらが先に創作したか」という点が問題になることはあります。

著作権の消滅

著作権は作者の死後70年間保護されます。
つまり1980年に作者が死去すれば、その著作物は2050年(の12月31日)までが保護の対象です。
作者の死亡時から数え始めるので、死亡時起算と言います。
(作者の死亡の翌年から数え始めます)

著作権の保護期間は2018年12月30日より50年から70年に延長されました。
これについてはTPPと著作権法改正で詳しく解説しています。

保護期間が過ぎた著作物は法的な保護はなくなり、著作権は消滅します。
(著作権の消尽とも言う)
ただし著作者人格権については著作権の保護期間終了後も一定の保護が残ります。
(著作者人格権の保護期間)

結構単純な話ですが、例外も多く意外に複雑です。
以下はさらっと目を通す程度でかまいません。

共同著作物の場合

共同著作物とは、制作に複数人が関わり、それぞれの制作箇所を明確に分離することのできない著作物のことです。
たとえば曲を作る時、複数人が曲のメロディを作って修正を繰り返してひとつの作品に仕上げた場合、ここはこの人の創作、という風に明確に分離させることはできないので共同著作物となります。
(作詞と作曲など明確に分けられるものは個別に著作権が発生します)

このような共同著作物の場合は最後の作者の死後70年が保護期間となります。

団体名義の場合

著作権は作者個人以外に会社などの団体が持つこともできます。
この場合の保護期間は作品の公表後70年が保護期間となります。
「団体の解散後70年」などにしないのは、その団体がいつまでも存続し続けることで著作権をずっと存続させることができてしまうためです。
著作物の公表時からカウントするので公表時起算といいます。

映画の著作物

映画に関してはやや特別扱いされていて、作品の公表後70年が保護期間となります。
公表した年から数えるのは団体名義の著作物と同様に、映画は大勢の人間がかかわる作品なので誰が著作者であるかを明確にするのが困難であるからです。

作者不明の著作物

作者が不明である作品にも著作権は発生しますが、作者が不明である以上いつ作者が死亡したのかを特定することが不可能です。
ペンネーム(変名)などで本当の作者がわからない場合も同様です。

このような場合は作品の公表後70年が保護期間となります。
ただし保護期間中に作者が判明した場合は、その作者の死亡から70年までが保護期間となります。
また、ペンネームであっても、その作者が誰であるかが周知されている(大抵の人が知っている)場合もその作者の死後70年が保護期間となります。
(藤子・F・不二雄は藤本弘である、など)

連載される著作物

アニメやドラマなどは毎週放送されるものもあります。
この場合の保護期間はやや特殊です。

その連載が一話完結ものである場合、その作品が公表された時点を起算とします。
たとえばドラえもんのアニメは一話完結ですから、2000年1月1日に放送があったとすればその放送作品は2070年の12月31日いっぱいまでが保護期間となります。

その連載が続きものである場合、最後の作品が公表されてから70年が保護期間となります。
(最後の作品が公表された時が作品全体の公表時となる)
たとえばドラゴンボールのアニメ(ドラゴンボールZ)はストーリーが連続していて、最終話の放送は1996年1月31日です。
この場合、ドラゴンボールZのすべての著作権は2066年の12月31日いっぱいまでが保護期間となります。
ただし、ストーリーは連続していたとしても、3年以上作品が公表されない期間があった場合、直近の作品の公表時から70年が保護期間となります。

ただしこれらは上で説明したような保護期間が公表時起算となるものに限ります。
普通の漫画連載などは作者の死後70年までが保護期間です。
アニメなどは団体名義の著作物(または映画の著作物)であり、作品の公表が起算となるためこのような保護期間の数え方になります。

著作権自体は上記の通りですが、著作隣接権にも保護期間はあります。
(⇒著作隣接権)
たとえばベートーベンはとっくの昔に作者死亡していますが、ベートーベンの曲を演奏したものには著作隣接権(演奏者の権利)が発生します。
またそれをCDなどに収録したものにも著作隣接権(レコード製作者の権利)が発生します。

著作隣接権の保護期間は実演(演奏)の場合は実演が行われた時から70年、CDなどは発売から70年が保護期間です。

つまりベートーベンの曲だからといって著作権を完全に無視できるものではありません。
ベートーベンのCDの音を勝手にネットにアップロードすれば違法アップロードになってしまいます。

ベートーベンの曲の演奏を収録したレコードの中には発売から70年経ったものがすでにあり、こういったものは著作権も著作隣接権も消滅していますので自由に使うことができます。
このように自由に扱えるようになった著作物をパブリックドメインといいます。
(⇒自由に使える著作物)

CDは1982年頃から出回るようになったので、一般的な音楽CDで著作隣接権が切れているものはまだありません。
レコード音源をCDに収録しなおしたものは著作隣接権が延長されることはなく、レコードの保護期間終了時点でCDの著作隣接権も消滅するものと思われます。
ただし、CD化に際してはデジタルリマスターなどの編集が加えられることが多く、ここに創作性が認められる場合は新たな著作権が認められる可能性はあります。
(あくまで可能性の話です)

著作者人格権の保護期間

著作者人格権、実演家人格権の保護期間には著作権法には規定がありません。
人格権である以上、作者死亡により消滅すると一般的には考えられています。
(⇒著作者人格権)

しかし、死者の著作物であっても著作者人格権、実演家人格権を侵害するような行為は禁止されています。
(著作権法 60条、101条の3)
これには○年後まで、という規定が存在しないため、理屈の上では死後100年経とうが200年経とうが禁止ということになります。
ただし、「その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。」という但し書きがあります。
「この限りではない」というのは、侵害にはならない、という意味です。

例えば、著作者人格権には同一性保持権がありますから、作者死亡後70年が経過して著作権が消滅した著作物であっても改変ができません。
しかし作品が古くなればなるほど、上記の但し書きによって改変しても許される範囲が広くなってくるといえます。
ただし、作者を冒涜するような改変は許されないでしょう。

なお、作者の死後にその人格権を侵害するような行為は、遺族に訴えられる可能性があるほか、刑事罰があります。
(500万円以下の罰金。これは親告罪ではない)
作者死亡だからといって何でもできるわけではないことは注意してください。

海外著作物の保護期間

海外著作物であっても国内と同様に保護されますが(⇒著作権で保護される物、されない物)、海外と日本とでは著作権法が違うので、保護期間が違うことがあります。
このような場合、基本的には日本の著作権法で定める保護期間が適用されます。
例外として相互主義を採用している国の場合はその国での著作権の保護期間と国内との保護期間を比べて、短いほうが適用されます。
例えば保護期間が作者の死後50年しかない国の著作物は、日本国内でも50年の保護しかないということです。

日本の場合、戦時加算というややこしい取り決めがあります。
日本は戦争中に海外の著作物を保護しなかった期間があるので、その期間分を保護期間に上乗せして計算するというものです。
戦時加算についてはJASRACのページが詳しいです。
http://www.jasrac.or.jp/senji_kasan/about.html

  • 著作権は著作物が作られた時点で自然に発生する
  • 保護してもらうために特許などのようにどこかに申請する必要はない
  • 基本は作者の死後70年間が保護期間。映画は公表後70年が保護期間
  • 著作隣接権は作品の公表後70年まで。
  • 著作権が切れていても著作隣接権が存在する場合は作品を自由にはできない
  • 完全に著作権が切れたものはパブリックドメインとなり自由に使える
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